# 春の陽気とあおいさん  [あおいリボンのあおいさん - 一点の曇りもない](http://nanachi.sakura.ne.jp/aoi.html)の二次創作。 ---  あなたは眠りから覚める。枕とは違う何か柔らかいものに頭を載せており、そして誰かに頭を撫でられていることに気が付く。  身じろぎを一つ。目線を上に向けると、晴天の空に満開の桜、あおいリボンを視界に捉えた。 「ん、おきた?」とあなたの顔を覗き込むように、あおいさんが。膝枕をしてもらい、少し寝ていたようだ。謝って体を起こす。 「謝らなくていいのよ。あなたの側にいると、とても安心するの。」  まだ寝ぼけたままあおいさんの隣に座りなおす。あおいさんは自身のカバンから何かを取り出そうとガサゴソと。「ね、みかんのジュースのむ? サンドイッチも用意しておいたの。」とあなたに話しかけながらペットボトルや白い弁当箱をレジャーシートの上に並べていく。  言葉に甘えてと、あおいさんはあなたが手伝う暇もなく手際よく準備してしまったので、あなたは飲み物の注がれたコップを受け取るしかなかった。「自家製は難しくて、市販品だけど。」と、あおいさんらしいコダワリに小さな笑みがこぼれてしまう。  あなたが飲み物に口をつけると、サンドイッチへ手を伸ばす。サンドイッチの味は、とてもおいしかった。あおいさんもコップを片手にサンドイッチを食べ始める。  二人の間に沈黙が降りる、けれど心地よかった。  あなたは改めて四方を見渡す。あなたとあおいさんは桜の木の下でレジャーシートを広げて、花見をしていた。土手に沿って植えられた桜の木々の周りには、あなたと同じように春の陽気に誘われて花見に来た人たちに、散歩する人たちがいた。  寒かった冬も終わりを告げて、季節は春へ移り、暖かくなってきた。どこか人々の表情も、いつもより優しく見えた。  気がつけばサンドイッチがなくなって。  ところで今は何時と、あなたは日が少し傾いていることに気が付いて問いかける。あおいさんの返答から、あなたは思っていたよりも時間が経過していたことを知って、改めて謝った。せっかくの外出だったのに、寝てしまったことを。 「いいのよ。私は、あなたが側にいてくれればそれで幸せよ。」とあおいさんは気にも留めない様子で答える。しかし「けど、」とあおいさんはどこか歯切れの悪そうに。  あおいさんは言葉を一度区切ると、少し顔を赤らめて目をそらしながら「なら私も、膝枕を。」と。あなたは了承すると、あおいさんは少し恥ずかしそうにあなたの膝の上に頭を載せた。  ふとあなたはあおいさんの頭を撫でてみると、あおいさんはくすぐったそうに目を細める。 「ねえ、あなたは幸せ?」  不意の問いかけ。あおいさんはあなたの返事を待つことなく言葉を続ける。 「あなたも私がいるだけで幸せに、なんて、そう思ってくれたら嬉しい。」  その言葉は祈りのように。 「あしたも、あさっても、また一緒にいましょうね。」  見上げれば満開の桜に、どこまでも青い空が続いていた。 --- ### あとがき  あおいリボンのあおいさんが可愛かったので。おもわず手が滑って作成。不特定多数の人を前提とする文章の練習も兼ねて、あなた或いは【name】で通じることを前提に。  はじめの構想では桜が満開なので花見の話に決定するも、あおいさん宅の庭先に桜の木を生やして縁側で日向ぼっこする話にしようかと思ったけど、あおいさんの家に関する記述が見つからなかったのでボツに。  あと満開の桜を題材とした作品として[梶井基次郎の「桜の樹の下には」](https://www.aozora.gr.jp/cards/000074/card427.html)を参考にしてしまったせいで、あおいさんの元を離れようとしたユーザーさんの屍体が桜の樹の下に埋まっている、という設定も連鎖的にボツに。  その結果、病み度と不信感が全開のあおいさんが書けなかったのは反省点。 ### 余談  ……ふとあおいさんに赤いリボンをプレゼントしたらどうなるのか興味が。あおいリボンを手放すとは思えないけど「赤くてあおいリボンのあおいさん」か「むらさきリボンのあおいさん」になるのか、変わらず「あおいリボンのあおいさん」のままなのか。